単位数と無単位数の区別は重要である。
上記記事の最後で片瀬久美子さんのツィートに言及した。最近、始めたTwitterで「一部で始まったナンセンスな教授法」について直接ご本人にお尋ねしたところ、ある方のTwitterをご紹介いただき、そしてその方の伝手で、このブログにたどり着いた。
上記記事で私の言う「数学的単位のある数」(単位数)と「数学的単位の無い数」(無単位数)という概念は、昔はあったことを知った。前者は「名数」、後者は「不名数」と呼ばれた。高木貞治は名数と不名数を次のように定義している。
「数と単位とにて,物の多き少きを表せるを名数といい,これに対して,ただの数を不名数ともいう。五冊,四十人,三尺,八升などは名数にて,五,四十,三,八などは不名数なり。」(2頁)
しかし両者の区別はさほど重要とは考えられていなかったようである。
「もちろん名数に添えた名前は単位を間違えないために,または演算の際意味のない計算を行わないようにするための注意に外ならない」(木村教雄『小学算術教材ノ基礎的研究』昭和11年(1936),121頁)(原文はカタカナ。以下の引用文も同。)
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1268105/70
上の文章は次のように続く。「…注意に外ならないのであって,数としての性質に於いては名数も不名数も異なるところはない。」
「名数に添えた名前」とは単位のことに他ならず、したがって「もちろん名数に添えた名前は単位を間違えないために」という文は「もちろん単位は単位を間違えないために」という意味不明な文になる。また「意味のない計算」とは例えば2m+3Lのような計算の事であろうか。いずれにせよ、この文から名数と不名数を区別することの重要性は見てとることができない。
一方で「数としての性質に於いては名数も不名数も異なるところはない」とあるように、名数と不名数の差異の認識は両者の同一性を認識するための手段にすぎないように見える。つまり名数と不名数の区別は、数学における数とはなんであるかという非常に高度な問題を子供たちに判りやすく理解させようという試みなのではないか。
だとすれば「時代が下ると,名数・不名数の区別はあまりうるさくなくなり,現在ではほぼ死語扱いになっている」のも頷ける。そもそも初めから両者の区別それ自体は重要なものとは考えられていなかったのであるから。
さて、ここで「掛け算の順序問題」は二つに分割して考えるべきである、というとりあえずの問題提起をしてみる。まず第一の問題は単位数と無単位数を区別して認識することは重要か、という問題である。私の答えは重要だ、である。
そこで第二の問題が提起される。すなわち、では如何にして両者の区別を認識させることができるか、である。私の答えは、掛け算の式を(日本の)習慣に従って単位数×無単位数と記述するよう指導(強制)することによって、である。
【追記】引用させていただいたブログは上記著者の高橋誠さんのブログでした。