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シュレディンガーの狸

このブログがなぜ"シュレディンガーの狸"と名付けられたのか、それは誰も知らない。

マネジャー育成の研修講師ための「小保方手記」解読講座

パルサという人が『あの日』Amazonレビュー欄で無茶苦茶なことを言っている。
彼によればSTAP幹細胞とは「受精卵」だそうである。

STAP現象により、リンパ球にAcr-GFPを発現させた「擬似精子」を作り、
それを卵子に授精させ、ES細胞用の培養液で増殖させたもの。

Amazon.co.jp: あの日の パルサさんのレビュー

この「受精卵」の作り方はいたってシンプル。培養皿と卵子と「Acr-GFPを発現させた」リンパ球があればいい。

それがもし、培養皿上で、卵子細胞核が自動的に入り、細胞分裂して、
細胞塊とか仔とか胎盤を形成するとしたら…
それは擬似精子といえる、擬似精子にはアクロシンが必要なのです!☆

もちろん、そんなことができたら、それ自体、画期的な発見になる。クローンを作るには卵子から核を取り除く必要がある。しかし、体細胞を「精子化」すれば、その必要はない。しかも、「疑似精子」は「培養皿上」で「卵子細胞核が自動的に入」るのであるから、「マイクロマニュピュレーターを駆使」する必要もない。
そんな荒唐無稽な話、誰が信じるねん。

と思いきや、実際に信じた人がいる。

彼女が発見したと主張した、STAP細胞は、本当にあったのか?
実はこのことの答えが、『あの日』に載っていました。このことは、まだどの書評にも載っていません、Amazonレビュー以外では当ブログだけです。

特報!STAP細胞は、あったのでしょうか。ここだけに載ってる独自情報、あなただけにお教えします。 : 正田佐与の 愛するこの世界

このブログの「社会人のための『小保方手記』解読講座」シリーズは結構面白かった。けれど「神戸の1位マネジャー育成の研修講師・正田佐与」さんもまた簡単に騙される人だと思うと、なんだかなぁ、である。

 

バルサさんの話が決定的にばかげている点は、そのようにして出来上がったマウスはキメラマウスではないという点である。

『あの日』によれば、若山さんの実験では、実際にキメラのようなものはできている。

キメラマウスの遺伝子を解析すると、割合は少ないがスフェア由来の遺伝子が存在するマウスも確認された。2種類の遺伝子情報が1匹のマウスの中に存在するというキメラマウスの定義を満たしている(p67)

あの日』

しかし「疑似精子」と卵子を「受精」させて(仮にそれが可能であると仮定して)生まれてくる子は、1種類の遺伝子情報しか持たない。だから調べればキメラでないことは簡単にばれる。
そんな捏造、誰が、すんねん、という話である。

また小保方さんが「STAP細胞でテラトーマできないことを知りながら、それをひた隠しにして研究をすすめた」というバルサさんの憶測も当たっていないと、私は思う。

バルサさんの主張は『あの日』の

ただ注入するだけではテラトーマを形成することはなかった。しかし、研究室が得意としていた組織工学の技術を使ってテラトーマに似た組織を作ることができた。(p.55)

という部分に依拠しているが、その前段の部分には次のように書かれている。

スフェア細胞はES細胞と異なり、生体内での増殖性が低く

この部分を読めば、小保方さんが、なぜキメラ実験を依頼したかがわかる。小保方さんは、スフェア細胞は「生体内での増殖性が低」いから完璧なテラトーマができないと考えた。しかし、不完全ではあるがテラトーマのようなものはできる。そして胚の中ではより高い増殖性をもつ可能性はある。だから、若山さんにキメラ実験を依頼した。それだけの話だと思う。別に完全なテラトーマができなかったことを若山さんに隠さなければならない必要はない。むしろ「テラトーマのようなもの」ができたことを話してキメラ実験に前向きになってもらうほうが得策である。

結果、「テラトーマのようなもの」ができたように、「キメラのようなもの」はできた。しかし実験を繰り返しても、STAP細胞(Oct4陽性細胞)はできるものの、完全なキメラ(そして『あの日』では触れられていないが、恐らく完全なテラトーマすらも)できなかった。
そして小保方さんは諦めた。しかし若山さんは諦めなかった。そこからSTAP研究は若山さんが主導するようになった、そのように展開していくのが『あの日』のストーリーである。