数とは何か? ~数の単位としての複素数の考察~(3)
虚部が0である複素数を実の複素数といい、逆に実部が0の複素数を虚の複素数という。
i~[0,1]
と定義される虚の複素数iは特別な存在である。
Q~[q,0]、Qi~[0,q]
すなわちiを掛けるということは、実の複素数の実部と虚部を交換し、実の複素数を虚の複素数に変換することである。ちなみに
i^2~[-1,0] (文C)
である。
複素数の言語的表示から数学的表示に移行する際の過渡的表示がP+Qiである。
P~[p,0]、Q~[q,0]
[p,q]~P+Qi (文A-3)
(文A-2)において主部[a,b]に対応する述部は「複素数」という名(この名は固有名であると解するべきであろう)であったが、(文A-3)の[p,q]を主部とする文では、それに対応する述部はP+Qiという象徴である。この象徴は「複素数」という固有名よりも数学的であるが、しかし数学的対象ではない。しかしまた、その象徴は、既に数学的対象としての複素数がどのような形をしているかを示している。
複素数(の象徴)の積(の象徴)については(文B-2)による積の定義に基づき次の文が成立する。
(P+Qi)(U+Vi)~[pu-qv,pv+qu] (文D)
そこで、数学的対象p+qiとu+viの積について、式
(p+qi)(u+vi)=pu-qv+(pv+qu)i (式D)
が成立するのはいかなる場合か、という問を提起する。その答は式
i^2=-1 (式C)
が成立する場合である。(文C)は(式C)に、(文D)は(式D)に、それぞれ対応していると考えれば、この対応関係は次のように一般化することができる。すなわち文
r~[p,q]
は式
r=p+qi
に対応している。数学的対象p+qiを複素数の言語的表示[p,q]に対応する数学的(直交座標系)表示という。
複素数の数学的表示によって、実の複素数が実数に他ならないことが明らかとなる。これに対して虚の複素数を虚数という。そしてiを虚数単位という。虚数qiにおける実数qはその虚数の大きさであると考えれば、実数pの大きさはpであり、その単位は1であると解釈することができる。その場合、複素数とは1を単位とする実数とiを単位とする虚数の和であると解釈される。しかし、より普遍的な解釈がある。まず複素数の大きさ|r|をp,qを用いて
|r|={(p^2)+(q^2)}^(1/2)
と定義する。そして、その大きさが1である複素数を数の単位であると考える。
|r|=Rであるとき、すなわち
(p^2)+(q^2)=R^2
であるとき、言語的表示 [p,q]は別の言語に「翻訳」することができる。もうひとつの言語的表示は〈R,θ〉である。これに対応する数学的(極座標系)表示はRe^iθである。その場合、p,qとR,θは次のような式で関係付けられる(オイラーの公式)。
p=R cosθ、q=R sinθ
数の単位とは|ψ|=1であるψのことである。その一般形は〈1,θ〉あるいはe^iθである。θ=0のときψは実数単位1となり、θ=π/2のときψは虚数単位iとなる。
数の単位は数ではない。しかし実数単位1は最も基本的な数であり、数でないとは考えられないる。これに対して虚数単位iは数ではないと考えることは可能である。そうすると0<θ<π/2のときのψは「数である」と「数でない」の中間の状態にあると考えられる。
(続く)
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