「マダラノヒモノ」殺人事件は解決しないまま、捜査本部は解散し、二人の女性刑事、上田眞実巡査と須田桃子警部が継続捜査にあたることになった。そして二人の捜査によって、容疑者は小保方晴子と若山照彦に絞り込まれた。
そんなある日、上田刑事は署長室に飛び込んでくるなり、言った。
「署長、犯人はやはり若山照彦でした」
「その根拠は?」
「あのダイイングメッセージです」
被害者は死ぬ直前に自らの血で
マダラノヒモノ
と書き残していたのである。
「君はこのダイイングメッセージの意味がわかったのかね?」
上田刑事は「もちろんです」と胸を張り、説明する。「当初、捜査本部では、これを『真鱈の干物』と解釈しました。これが捜査を混乱させる原因でした。私、昨日Wikiで調べたんです。真鱈を干物にしたものは、普通『棒鱈』と呼ぶんです。だからダイイングメッセージは真鱈の干物とは無関係なんです。被害者が伝えたかったメッセージはこうです」そう言って上田は白板に書いた。
「まだらの紐」の
「署長は『まだらの紐 』をご存知ですか?」
「もちろん、知ってるよ。コナン・ドイルの有名な推理小説だろ」
上田は「その通りです」と平然と答えたが、内心は穏やかではなかった。彼女は昨日Wikiで調べて初めて知ったからである。
「で、要するに被害者は何を伝えたかったのかね?」
気を取り直して上田は言う。「わたしを殺したのは『まだらの紐』の犯人だ、ということです。おそらく被害者は『犯人だ』と書く前に力尽きてしまったのでしょう」
「そのメッセージがなぜ若山を犯人だとする根拠となるのかね?」
「署長は、その小説に登場する犯人もご存知ですよね」
「いや、子供の頃、読んだきりだから、そこまでは覚えていないな」
上田は優越感に浸りながら、「では、お教えしましょう。犯人はロイロットという博士です。被害者は、犯人が博士号を持っていると伝えたかったのです。小保方さんは博士号を剥奪されています。容疑者の内、博士は若山だけです。つまり犯人は若山です」
「おいおい、ちょっと待て。事件が発生したのは小保方が博士号を剥奪される前だぞ」
「ですから、被害者は、小保方さんが博士号を剥奪されることを事前に知っていたんですよ。被害者は早稲田大学の関係者ですよね?」
「いや、違う。てゆうか、君は被害者の身元も知らずに捜査していたのか!?」
驚く署長に、上田は平然と言ってのけた。
「そんなの知る必要はありません。やったのは若山に決まってるんですから」
開いた口が塞がらない、という常套句はこういうときに使うんだろうな、と署長は思った。
と、そのときドアが開き、ひとりの女性が入ってきた。須田刑事である。須田は上田に近づくと「話は全部、聞かせてもらったわ、上田刑事。あなたって本当に支離滅裂な推理をするわね。あなたの頭に中にあるのは八丁味噌なの」と言い捨て、署長に向かって言った。
「犯人はやはり小保方晴子でした」
To Be Continued