ふたつの変数x,yを用いて新たに変数u,vを
u=x^a
v=b^y
と定義する(ただしaとbは定数). そうすると, それらの変数の微分は, それぞれ
du=a{x^(a-1)}dx
dv=(b^y) logb dy
と定義される.
ということは多変数関数w=x^y については, その全微分は
dw=y{x^(y-1)}dx+{(x^y) logx}dy
と定義されるということである.
上記の式のy{x^(y-1)}と(x^y) logxはそれぞれx-偏微分商, y-偏微分商とよばれる。偏微分商について高木貞治は次のように述べている. 「偏微分商の定義は全く機械的で、計算上の手段であるにすぎない」(『解析概論 改訂第三版』p55). そこで上記の全微分の定義が妥当か否かを数値計算によって検証してみよう.
そのためには変数x,yがともに, ひとつの変数tの従属変数であると仮定しなければならない。そこで, 仮に x=t^2, y=3t と定義することにする.
すると変数wは変数tによって, 次のようにも定義されている。
w=(t^2)^3t
そうすれば多変数関数の全微分の定義が妥当か否かは、次の二つの式を比較することで明らかとなるはずである.
Δw(x,y)=y{x^(y-1)}Δx+{(x^y) logx}Δy
Δw(t)=(x+Δx)^(y+Δy)-x^y
={(t+Δt)^2}^{3(t+Δt)}-(t^2)^3t
この二つの式に実際に数値を代入して, Δw(x,y)とΔw(t)の値をエクセルで計算し, 両者の値を比較してみよう.
結果は以下のとおりである. なおR=Δw(t)/Δw(x,y)である.
上はt=2で固定し, ΔtをΔt=0.1から0.00001でまで変動させた結果であり, 下はΔtをΔt=0.00001で固定しtを変動させた結果である. 上の結果は, Δtが減少するとき, Δw(t)とΔw(x,y)がより等しくなることを示しており, 下の結果はtを変動させてもΔw(t)とΔw(x,y)の比にそれほど影響がないことを示している.
なおΔt=0.00001の条件の下で, t=10, 20, 30でもRを計算してみたが, その結果はそれぞれR=1.00010, 1.00012, 1.00013であった. tの増大とともにΔw(t)とΔw(x,y)の近似は悪くなる傾向にあるようである. ちなみにt=40では計算不可能であった.
さらに同様のことをΔt=10^-10の条件下で行った場合, R=1.00001, 0.99999, 0.99999であった.
結論として, 多変数関数w=x^y については, その全微分を
dw=y{x^(y-1)}dx+{(x^y) logx}dy
とすることは, 検証可能な範囲では妥当であるといえる.
【注記】この記事は昨日アップした記事の改訂版である。
記号と規則、あるいは変数と微分 ?力学についての非科学的考察?
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