シュレディンガーの狸

このブログがなぜ"シュレディンガーの狸"と名付けられたのか、それは誰も知らない。

「円周率の問題に便乗する」に便乗する。

ある方のブログ「[2/24追記] 円周率の問題に便乗する。半径11の円の面積はいくつか?」で次のような問題提起があった。

ある人が小学生の宿題を見ながら以下の疑問を提起した。
「半径11センチの円の面積を円周率を3.14として計算した時の答えは、11*11*3.14=379.94は厳密には誤りで、有効数字3桁で380の方が正しいのではないか?」
これに端を発して賛否両論様々な議論が巻き起こったのである。
(ちなみに、半径11の円の面積を5桁の有効数字で表すと、正確には380.13である。)

このブログ主は「380が正しい」という意見に賛成し、その理由を次のように語る。

人類が何百年もの時間をかけて漸く得ることに成功したこの円周率を、「あ。3.140000でいいっすね」とか、たかだか小学校教諭の分際で勝手に変えることはできないのです。
ぶっちゃけ、言語は変わっても、数字の意味は不変です。これは自然界の法則だからです。
(中略)
ちなみに、「円周率を3.14として」というのは「円周率を3.14と(近似)して」という意味です。
あと、比較として用いられていた「摩擦係数を0として」というのは仮定ではなくて想定です。地球上では作るのが困難ではありますが、摩擦係数を0.00に近似できるくらいの環境なら作れるでしょ? その環境を想定してるんです。
ありえない事柄を仮定するのはダメです。
仮定は必ず検証とセット。検証できない事柄を仮定して、それをあろうことかそのまま解にするなど、あってはならないことです。

しかし、私は「ありえない事柄を仮定する」のが数学だと考えている。例えば直径1mの円の円周をmm単位のメジャーで測定すれば3141mm(あるいは3142mm)になることは現実にありえることである。現実的にありえないのは、例えばその測定値が3141592μmになること、あるいは 3141592653nmになることである。
数学的に理想的な円、すなわち円周率がπになる円など現実には存在しない。円周率πは測定値から得られた数値ではなく、理論値である。円周率が3.14の円は理想的な円ではないが、現実に存在する円である。そのような円は円ではないという人に尋ねよう、「では、あなたは円周率が小数点以下何桁まで円周率πと一致していれば、現実に存在する円を円と承認するのか」と。
「仮定は必ず検証とセット。検証できない事柄を仮定して、それをあろうことかそのまま解にするなど、あってはならないことです」というが、ある現実的な(理想的でない)円の円周と直径を測定し、その結果から円周率が3.14であることを検証することは可能である。不可能なのは円周率がπであることを検証することである。円周率が無理数であること、その数字が、例えば3.141592と3.141593の間に存在することは、(検証されたのではなく)証明されたのである。
円周率πは人間の数学的思考の産物であり、したがってそのような円周率をもつ円を現実につくることは不可能である。ちょうど幅のない線を引くことが不可能であるように。

しかし、小学生にとって、小数点以下二桁ってそりゃもうすごい精度ですよ。
平方ミリメートルの更に小さい位まで算出できるのですから。

円周率を3.141592とした場合、半径1000mの円の面積は3141592平方メートルで、円周率を3.14とした場合、半径が1kmの円の面積は3.14平方キロメートルだ。後者には小数点以下二桁の数字であるが、前者は小数点以下の数字はない。どちらの数字の精度が高いのか。
「小学生にとって、小数点以下二桁ってそりゃもうすごい精度ですよ」という主張が何を言いたいのか、さっぱりわからない。

 

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