読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シュレディンガーの狸

このブログがなぜ"シュレディンガーの狸"と名付けられたのか、それは誰も知らない。

『あの日』から、些細なことが気になってしかたがない私は、特許について調べた。

STAP細胞

まず、私が気になった『あの日』の一文を引用する。

若山先生は(中略)幹細胞株化の仕事は若山研の研究成果であり、アメリカの研究室には何ら権利はないと主張していた。実際に、若山先生は、若山先生自身に51%、私に39%、バカンティ先生と小島先生には5%ずつの特許配分を理研の特許部門に提案した。(p102)

あの日

この部分が気になり、特許について色々調べた。まず特許権に先行して、特許を受ける権利が存在することがわかった。

特許を受ける権利(とっきょをうけるけんり)とは、特許法において、発明を完成した発明者に認められる権利の一つであり、国家に対して特許権の付与を請求することのできる請求権(公権)としての性質と、発明の支配を目的とする譲渡可能な財産権(私権)としての性質を併せもつ権利である。

特許を受ける権利 - Wikipedia

特許を受ける権利を持つものが特許庁に特許の出願と審査の請求を行い、審査を通ったとき、特許権の設定登録が行われて特許権が発生する(特許を受ける権利が特許権に昇格する)。そのとき特許権は特許を出願した者に属する。そして、その者は必ずしも発明者とは限らない。というのも特許を受ける権利は譲渡可能であるからである。一般に職務発明については発明者ではなく、発明者である職員を雇用する組織が出願人となる。
理研も同様である。理研職務発明規定によればSTAP細胞の特許について次のような手続きがとられることになる。

1. 若山さんは発明届出書にSTAP細胞その他、発明についての詳細な内容と各発明者の氏名、その者たちの間の発明への寄与割合を記載し、所属長に届ける。
2. 所属長は、その発明が職務発明であるか否かの意見を付して、理事長に届け出る。
3. 理事長は、その発明が職務発明であるか否かの認定をし、職務発明であると認定したときは、その発明について、特許を受ける権利を承継するか否かを決定する。
4. 理事長が承継すると決定したときは、その承継される特許を受ける権利は、発明がなされたときに遡って各発明者から理研に譲渡したものとみなされる。
5. 理事長が出願を決定した場合は、理研が特許出願を行う。

http://ccjsun.riken.go.jp/ccj/doc/usersguide/files/007-004-010.pdf

理研の規定は理研の役職員の他、「その他研究所の業務に従事する者」に適用される。小保方さんはこの時点では、まだ理研の職員ではないが、「その他」に含まれると解釈することにする。
理研の規定によれば、STAP細胞特許権を獲得するのは、発明者各個人ではなく理研である。しかし話はさらにややこしくなる。STAP細胞は共同研究であり、その特許は理研だけではなく、バカンティさんらが所属するアメリカの研究機関と共同で出願しなければならないからである。理研は「所外研究機関等と共同で特許出願等をする際は、予め別に定める共同出願協定書を締結する」ことになる。
そこで理研の規定と若山さんの提案に矛盾がないとすれば、次のように解釈するしかない。すなわち、まず若山さんは、特許の共同出願に際して、事前に特許権の持ち分を理研が90%、アメリカの研究機関が10%とする協定を結ぶように提案し、次に理研に所属する発明者の発明についての寄与割合について、若山さんが51/90、小保方さんが39/90とするよう提案したと解釈するのである。
では発明者の寄与割合とは何か。理研特許権で収入を得れば、理研から発明者に補償金が支払われる。例えばSTAP細胞特許権が100億円で売却されたとしよう。その売却代金のうち、理研特許権の持ち分に応じて90億円を受け取ることになる。そして、そのうちの20%、すなわち18億円が補償金として発明者に支払われる(これは理研の規定に明記されている)。そして18億円は寄与割合に応じて発明者各人の配分される(これは明記されていない)。つまり若山さんには10億2000万円、小保方さんには7億8000万円が支払われる。
さて私が気になったのは次の点である。なぜ若山さんが51%、小保方さんが39%なのだろうか、なぜ切りのいい50対40というふうにしなかったのだろうか。1%の違いにどんな意味があるのだろうか。もし、これが株式の保有割合ならその意味がわかる。株式を50%保有しているだけでは、その会社を支配したことにはならない。株主総会の決議において、可否同数の場合、議案は否決されるからである。株主の権利には配当請求権の他に、決議権がある。ある株主が株式の過半数(50%超)を保有して、はじめて彼はすべての普通決議の可否を決定すること、また役員の選任と解任を決定することができ、会社の支配者となる。
では、発明者にも補償金を請求する権利の他に、決議権のようなものがあるのであろうか。もしかして、ひとりの発明者の寄与割合が過半数を超えると,彼が補償金の全額を受け取ることができるとか。
とにかく、若山さんの提案は不可解である。もっとも若山さんは、そんな提案はしていない、うっかり屋の小保方さんの勘違いである可能性も否めない。
いずれにせよ『あの日』には小さな謎がちりばめられている。この本を読んで以来、些細なことが気になってしかたがない。