このES細胞は、MTAがかけられていないので、「理研の物」で、理研から外に出されない限り、「盗難事件」にはなり得ません。
【あなたは無罪だ!】小保方晴子さんの潔白を証明する! : 小保方晴子さんへの不正な報道を追及する有志の会
という記事がありました。
以前、私も同じ主張をしたことがありました。
仮に小保方さんが若山さんに無断で若山研究室から細胞を持ち出し、自分の研究室の冷凍庫に保管したとして、それが窃盗罪になるのか? その細胞は理研に雇用されている人間が理研の費用で作ったものである。したがって所有権は理研にある。理研の建物の外へ無断で持ち出せば、窃盗罪が成立するが、そうでない限りは犯罪にはならない。
(ES)細胞は(研究のため解析するという)仕事にもかかわらず(若山研究室から)運び出されました - Schrödingerの狸
しかしこの主張は誤りです。
窃盗罪の客体は他人の所有する物ではありません。占有する物です。
本罪の客体であるためには、他人の占有する財物であることを要する(242条参照)。ここで「占有」があるといえるためには、
1.支配の事実
2.支配の意思
が必要と考えられる。1.『支配の事実』があるというためには、じかに手に持っている必要はなく、占有者が外出中、自宅に置いてある物にも支配の事実が認められる。支配の意思は補充的に考慮されることになる。
ES細胞が理研の所有物であるとしても、それを若山さんが占有(支配)していたならば、若山さん以外の人間が若山さんの意思に反して、それを占有したとき、窃盗罪が成立します。
また若山さんが引っ越しに際して、ES細胞を理研に残していったとき、支配の事実は消滅します。そのとき、はじめて所有者が問題となります。ES細胞を「不法領得の意思」をもって領得すれば、遺失物等横領罪が成立します。
不法領得の意思とは、通説的な説明によれば、所有者を排除する意思とその物の効用を享受する意思の総体をいうとされる。