シュレディンガーの狸

このブログがなぜ"シュレディンガーの狸"と名付けられたのか、それは誰も知らない。

『あの日』の小保方晴子さんのもうひとつの「真実」

真実を歪めたのは若山だ! - Schrödingerの狸では小保方さん、若山さんのいずれか一方が真実を歪めている、という前提で話を進めた。つまり、小保方さん、若山さんの両方が真実を歪めている可能性については考えなかった。この可能性を考えるとき、もうひとつの「真実」(=私の妄想)が浮かび上がる。

キメラ実験のための細胞を若山さんに渡したときの模様を小保方さんは次のように証言している。

 ある日いつも通りスフェアを渡すと、「これまではスフェアをバラバラの細胞にしてから初期胚に注入していたが、今日からはマイクロナイフで切って小さくした細胞塊を初期胚に注入してキメラマウスを作ることにした」とおっしゃった。(p91)  

あの日

だが、これは歪められた真実である。小保方さんは事前に実験方法の変更を知らされていた。

また、キメラ実験に成功したとき模様を若山さんは次のように証言している。

 小保方さんは涙を浮かべて喜んでいました。でもわたしは何かの間違え、何かの手順をミスして光っちゃったのかと不安に思いました。 

梶原しげる:【294】「その時マウスは緑色に光った!」若山教授が語った幻のSTAP細胞誕生秘話 | BizCOLLEGE <日経BPnet>

これも歪められた真実である。若山さんが「不安に思いました」というのは真実かもしれない。しかし、それ以上に小保方さんも不安、あるいは恐怖を感じていたはずである。

ところで、みなさんはヤクザの親分が子分に殺人を命令するときに、どのような言い方をするか、ご存知であろうか。子分が居る前で、わざとらしく、このような独り言を言うのである、「あいつが生きてたら、ワシ、ホンマに困るんや。早よ、死んでくれへんやろか」。

さて、もうひとつの「真実」を、またまた小説風に再現してみよう。

題して「ゼロの真実~元博士・小保方晴子~」

若山は晴子に、さりげなく言った。「次のキメラ実験はこれまでとは違った手法でやろうと思うんだ。これまではスフェアをバラバラの細胞にしてから初期胚に注入していたが、次回はマイクロナイフで切って小さくした細胞塊を注入することにしよう」

「わかりました」と答え、自分の席に戻ろうとする晴子に背中に向かって、若山は大きな声で独り言を言った。

「この方法でもキメラができないと、ボク、本当にどうしていいかわからないよ。まったく困ったもんだ。なんとか次こそは成功してほしいもんだ」

この独り言を聞いた晴子は、決断を迫られていると感じ、「やはり、そうするしかないのか」と心の中でつぶやいた。

そして、その日がやって来た。晴子はルビコン川を渡ることにした。「先生、STAP細胞です」という晴子の声は震えていた。若山は、晴子の異様な様子にまったく反応せず、細胞を受け取り、手際よく胚に注入した。それからというもの、晴子は「私は悪くない」と自分に言い聞かせた。もしキメラ実験が失敗に終われば、まだ後戻りはできる。実験の失敗を祈りつつ10日が過ぎた。そして若山からキメラができたと連絡を受けた晴子は覚悟を決めた、もう「あの日」には戻れないのだ、と。

さらに若山からは、STAP細胞を特殊な培養液(ACTH + LIF)で培養すると、増殖することも知らされた。しかし真実を知っている晴子はまったく驚かなかった。さらに若山は次のように指示した。「念のため、ES細胞の増殖に必要な培養液(2i + LIF)でSTAP細胞を培養してくれないか。その培養液ではSTAP細胞が死滅することを確認するためにね」そして若山は、こう念を押した。「いいか、間違えるなよ。培養するのはSTAP細胞だよ」

この言葉で晴子は確信した、若山は真実に気付いている、と。

今、晴子は手記を執筆しながら、すべての真実を語れないもどかしさを感じている。と同時に、真実を歪め、自分だけ逃げ切るつもりの若山が許せない。晴子は思う、この手記は、すへてを失い、ゼロになってしまった自分の怨念が投影された「真実」なのだ、と。

 

【参考】

もし、STAP細胞ES細胞が混入されていた場合、ES細胞の増殖に必要な培養液(2i + LIF)で培養するとSTAP細胞ES細胞の混入)は増殖するはずです。しかしながら、この論文の中ではSTAP細胞を2i + LIFで培養しても生存することができず、他の特殊な培養液(ACTH + LIF)でSTAP幹細胞が樹立できたと示されていました。すなわち、この実験によってSTAP細胞ES細胞が混在していることが否定されていたわけです。さらにSTAP細胞からSTAP幹細胞の樹立は小保方さんではなく、若山さんが行っていたことを小保方さんが会見で話していました。若山さんが行った実験で、かつES細胞の混入を否定する結果が得られていたため、STAP細胞 = ES細胞と確信しきれずにいました。 

しかし、昨日の会見の中でサイエンスライター・片瀬久美子さんの質問によってその謎が解けました。若山さんは、ACTH + LIFでSTAP幹細胞の樹立を行っていたが、2i + LIFでSTAP細胞が死滅する実験はしておらず、その実験は小保方さんが行ったということでした。 

STAP細胞由来幹細胞の正体は既存幹細胞なのか?|関 由行|note

 

ゼロの真実~監察医・松本真央~ DVD-BOX