シュレディンガーの狸

このブログがなぜ"シュレディンガーの狸"と名付けられたのか、それは誰も知らない。

最終兵器彼女

あらすじこのストーリーはフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません、などと、なぜこの「書かなくてもそりゃ当たり前だよね」とも思える記載をしているのか、それはおかしな勘違いをする人や常識が通用しない人への対策のためです)

ある日、謎の「敵」タメイキにブログが空襲される。戦火から逃げるタヌキが見たのは、免疫学を虚大な武器に変え、タメイキに復讐を誓うモンタ・パクリスト伯を味方に付け「最終兵器」と化して敵と戦うとみ子の姿であった。論争が激化していくにつれ、とみ子は脳力が暴走していき、医師とも医学博士ともほど遠いものとなっていく。そして次のような学説(学とみ子さんの説という意味であり、学説ではない)を唱えるようになる。

つまり、元の動物固有の持ち物であるTCRを発現している分化したT細胞は、次の別の動物の中では増殖しないと考えられます。
分化済(痕跡のある)T細胞はすでに用済の細胞であり、細胞死に向かうタイプの細胞だからです

キメラマウスは、分化したT細胞からできたのではなくとも、脾細胞由来の酸浴後細胞が初期化したことを証明したことを、査読者とネーチャー編集部は認めたのです。

本筋

学説が誤りであることは丹羽説さんの「理解」を読めば明らかである。 

論文では生後一週間のマウスの脾臓から、まず「CD45」というたんぱく質を指標にリンパ球を集める。そのうち十〜二十%がT細胞で、T細胞の中でも遺伝子に痕跡を持つのは十〜二十%。つまり集めたリンパ球のうち、TCR再構成を持つ細胞は一〜四%しかない。
(中略)
注意してほしいのは、STAP細胞の塊は、さまざまな種類の細胞の集団からできており、各種の細胞が混在した性質を残しているということだ。この中には遺伝子に痕跡を持つT細胞がいてもほんの一部に過ぎない。
さらに、STAP細胞の塊を十〜二十個の細胞の小さな塊に切り分けて受精卵に注入し、キメラマウスを作る。ES細胞での実験の経験から考えると、十〜二十個のSTAP細胞のうち、キメラマウスの体になっていく細胞はおそらく数個程度だ。その数個の中で、遺伝子に痕跡を持つT細胞があるかどうかはかなり確率論的な問題になることは我々も理解していた。

捏造の科学者 STAP細胞事件』p159

「キメラマウスの体になっていく」数個程度の細胞の中に「遺伝子に痕跡を持つT細胞がある」確率はかなり低いというのが丹羽さんの理解である。これは逆に言えばTCR再構成を持つT細胞から作られたSTAP細胞が運よく「キメラマウスの体になっていく」ならば、キメラにTCR再構成が見られるということである。

そもそも学説が主張するようにT細胞由来のSTAP細胞が「キメラマウスの体になっていく」ことがないなら、そのSTAP細胞でキメラを作る実験自体が無意味になるのであるから、その実験を行い論文に記載したSTAP論文の著者全員が学説を否定していることは自明である。

なお丹羽さんと笹井さんの間にはTCR再構成に関するデータの取り扱いについて意見の相違があったようである。

丹羽氏は 2013 年 1 月に論文作成に加わった際に、小保方氏が継代培養を繰り返していた 8 系統の STAP 幹細胞の TCR 遺伝子の再構成は確認されなかったと聞いたと説明し ている。さらに、丹羽氏は笹井氏に対して、TCR 遺伝子再構成に関するデータを論文に 含めることについては慎重にすべきとの意見を伝えた。

運まかせのキメラ実験は失敗し、のみならずSTAP幹細胞にもTCR再構成が見られないとなれば、「Nスペ」の言う通り、笹井さんはここで立ち止まるべきだった。しかしそうすると「STAP現象は揺るぎないもの」にならないと考えた笹井さんは丹羽さんの意見を聞き入れなかった。

ちなみにSTAP幹細胞にTCR再構成が見られないことに関しての笹井さんの解釈は以下の通り。

小保方氏の追試が不成功であった点に関して、笹井氏らは STAP幹細胞がヘテロな集団であり、長期的な継代培養により再構成が起っていた細胞が消失したという解釈を採った。

  研究論文に関する調査報告書 p27